皆さんは仕事をするなかで、「取引先の決算書を確認したいな」と思ったことはありませんか?
法人として起業されていたり、会社にお勤めである場合は、「帝国データバンク」や「東京商工リサーチ」といった調査会社と契約をしたうえで、詳細な決算書を取得することができる場合があります。(企業によっては決算書を開示していない場合があるため、必ず詳細な決算書を取得できるわけではありません。)
しかし、フリーランスや一般の方の場合は、調査会社と契約できなかったり、詳細な決算書の取得料金や企業調査料金が高額であるため、二の足を踏んでしまうといったことがあります。
ですが、取引先が電気工事を営む企業であれば、決算書を閲覧できる可能性があります!
今回は、電気工事業者の決算書の閲覧方法と、都庁で電気工事業者の決算書を閲覧するまでの方法等についてご紹介します。
でも、私の仕事では関わりないから知らなくても良いかな
個人だけど電気工事業者の決算書を閲覧することはないしな・・・
上記のような方でも、将来どこかのタイミングで知識が役立つかもしれませんので、少しでも興味があれば、最後まで読んでいただけたら嬉しいです!
※なお本記事の筆者がどんな人物か気になる方は、ぜひ下記をご覧ください!
電気工事業者なら、各都道府県庁で決算書が確認できるかも!
電気工事業者は仕事を行うために、各種「建設業許可」を取得している可能性があります。
建設業許可とは
建設工事の完成を請け負うことを営業するには、その工事が公共工事であるか民間工事であるかを問わず、建設業法第3条に基づき建設業の許可を受けなければなりません。
ただし、「軽微な建設工事」のみを請け負って営業する場合には、必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいこととされています。
*ここでいう「軽微な建設工事」とは、次の建設工事をいいます。
[1]建築一式工事については、工事1件の請負代金の額が1,500万円未満の工事または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
●「木造」…建築基準法第2条第5号に定める主要構造部が木造であるもの
●「住宅」…住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で、延べ面積が2分の1以上を居住の用に供するもの
[2] 建築一式工事以外の建設工事については、工事1件の請負代金の額が500万円未満の工事
※上記金額には取引に係る
消費税及び地方消費税の額を含みます。
国土交通省「建設業の許可とは」より
上記引用から、公共工事を行う場合や、民間工事の場合で一定規模を超える工事を行う場合は、建設業許可を取得しなければなりません。
また、取引先からより多くの工事を受注するために、軽微な工事しか行わない場合でも、建設業許可を取得している場合もあります。
建設業許可を取得する・している電気工事業者は、官公庁に決算書を含む各書類の提出が必要となっています。
東京都に本社(本店)がある会社の場合は、東京都庁に建設業許可の各申請書類を提出しに行くこととなります。
そして、東京都庁に提出された建設業許可の各申請書類は、申請さえすれば誰でも閲覧可能です。
※なお、建設業許可の各申請書類の閲覧は、閲覧したい企業の本社(本店)所在地を管轄する都道府県庁でしか見ることができません。そのため、北海道に本社がある取引先の建設業許可の各種申請書類を東京都庁で確認することはできません。
都道府県庁に決算書を確認しに行く前に準備しておきたいこと・モノ
さて、各都道府県庁に電気工事業者の決算書を含む建設業許可の申請書類を、すぐにでも見に行きたいところですが、事前に準しておきたいこと・モノがいくつかあります。
- 「許可番号」「社名」「代表者の氏名」「所在地」をメモ書き
- 「建設業許可申請書等閲覧請求書」を事前に記入
- 「貸借対照表」と「損益計算書」の書式を用意
- 電卓などを用意
「許可番号」「業者名」「代表者の氏名」「所在地」をメモ書き
まずは、決算書を確認したい電気工事業者の「許可番号」「業者名」「代表者の氏名」「所在地」を検索してメモなどに控えておきましょう。
東京都の場合、後ほど紹介する「建設業許可申請書等閲覧請求書」がインターネット上に公開されているので、メモを取らずに、直接「建設業許可申請書等閲覧請求書」に記入すればいいです。
しかし、他の道府県の場合は、インターネット上に「建設業許可申請書等閲覧請求書」が公開されているとは限りません。
そのため、事前に「許可番号」「業者名」「代表者の氏名」「所在地」の4つをメモしておきましょう。
ちなみに、「許可番号」「業者名」「代表者の氏名」「所在地」を調べるのであれば、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」を利用しましょう。
使い方は、「商号又は名称」に「業者名」を入力し、「所在地検索指定」にて「東京都」を選択し、検索をするだけです。
自分が調べている業者が表示されたら、「商号又は名称」の該当の業者の名前をクリックします。
画面が移動し、「建設業者の詳細情報」が表示されるので、「許可番号」「商号又は名称」「代表者の氏名」「主たる営業所の所在地」をメモしましょう。
もし、「メモ書きなんて面倒くさい!」という方は、PDFを出力できるので、そちらもご活用ください。
「建設業許可申請書等閲覧請求書」を事前に記入
上記『「許可番号」「業者名」「代表者の氏名」「所在地」をメモ書き』でも少しだけ、紹介しましたが、東京都の場合は「建設業許可申請書等閲覧請求書」がインターネット上に公開されているので、事前に記入して持っていきましょう。
現地で必ず記入を求められるので、事前に記入しておけば手間が減ります。
記入事項は、閲覧者である自分自身の情報と、閲覧したい電気工事業者の情報があります。
閲覧者である自分自身の情報としては
- 住所
- 氏名
- 勤務先
- 電話番号
- 閲覧の目的
上記5つです。
「住所」は、お住いの住所でも良いですし、お勤めの会社の住所でも良いです。
また、「勤務先」は、フリーランスや一般個人の方は未記入でも問題ありません。
「閲覧の目的」は、どのような内容でも拒否されることはないかと思います。私の場合は、仕事として行くので、いつもは「取引先の決算情報確認のため」と記載しています。
個人の場合も同じような閲覧目的で良いかと思いますが、気になる方は「工事依頼先の決算内容確認のため」もしくは「決算内容調査のため」と記載すれば問題ありません。(実際にR5.7.28に個人的にそのような内容で決算を取得を試みて、問題なく閲覧できました)
一方、閲覧したい電気工事業者の情報としては、
- 許可番号
- 業者名
- 所在地
以上となります。
ちなみに「代表者名」の記入は必要ありません。
ただ、都道府県庁の職員の方が持ってきた電気工事業者の資料が、自分の閲覧したい電気工事業者の資料で間違いないかを確認する際に使います。
上記事項を記入したら、記入した「建設業許可申請書等閲覧請求書」を都道府県庁の担当部署に持っていけば、スムーズに閲覧手続きを済ませることができます。
「貸借対照表」と「損益計算書」の書式を用意
都道府県庁の職員の方が、電気工事業者の資料を持ってきたら、決算内容を確認することになります。
その際に、「貸借対照表(B/S)」と「損益計算書(P/L)」の書式は、事前に自分で用意して持参するようにしましょう。
「貸借対照表(B/S)」とは
企業のある時点の資産状況を表した表です。現預金や土地・建物といった資産から、借入金等の負債などがいくらあるのかが分かります。
「損益計算書(P/L)」とは
企業が、ある期間でどれだけの利益を稼いだか、といった会社の経営成績をあらわす決算書類です。売上高から始まり、各利益や費用などを算出して、最終的に「当期純利益・損失」という、会社がいくら稼いだのか、もしくはいくらの損失を出したのかが分かる決算書類です。
持参した「B/S」や「P/L」の書式に、閲覧している電気工事業者の決算内容を書き写します。
「B/S」「P/L」は複数期閲覧して、比較することではじめて真価を発揮するため、可能であれば、3期分は閲覧・書き写したいところです。
なお、PCやタブレットの持ち込みはOKとなっているので、「B/S」と「P/L」をデータで作成・入力するのも作業効率があがるのでオススメです。
「B/S」と「P/L」を自分で作成するのが難しい方や、自前のモノを作るのが面倒くさいという方は、神奈川県の「許可申請書等ダウンロード」サイトに、「B/S」「P/L」の書式がありましたので、ご参照ください。(第十五号の貸借対照表・法人用と、第十六号の損益計算書・法人用です。)
電卓などを用意
私が実際に都庁に行って電気工事業者の決算書を閲覧するときに、「B/S」「P/L」の書式以外で、現地へ持っていくことをオススメする道具も記載しておきます。
持参していなくても問題はありませんが、持参しないと困ったり、作業効率が落ちてしまいます。
- 電卓
- 筆記用具
- 定規
- タブレット
- ノートパソコン
- テンキー
写真撮影はできませんが、持ち込んだ電子機器を使うことは可能であるため、もし持っているのであれば、タブレットやノートパソコンを持ち込むのもありです。
また、タブレットやノートパソコンを持ち込んだ時は、作業効率化のためにテンキーも用意しておくと便利です。
東京都で電気工事業者の決算書を確認する場合の基本的事項
東京都に本社・本店がある電気工事業者の場合は、その電気工事業者が建設業許可を取得しているようであれば、決算書などを東京都庁で閲覧をすることができます。
閲覧するための基本的な事項を下記表にまとめましたので、ご参考ください。
項目名 | 参考 | 備考 |
---|---|---|
閲覧場所 | 東京都庁 市街地建築部 建設業課 (TEL:03-5388-3351) | ・都庁第二本庁舎の3階にあります ・11階にある「市街地整備部」と間違えないように気を付けてください。 |
閲覧可能時間 | 午前:年間契約者のみ閲覧可能(一般閲覧者は午後のみ) 午後:12:30~16:30(受付終了は16:00) | 1回の閲覧時間は1時間が目安 |
料金 | 1件(社)あたり300円 | ・閲覧1件(社)毎にプラス300円 ・閲覧料金は非課税 |
待ち時間 | 時と場合による 閲覧者数が多いと、待ち時間が発生する。 | ・現地に到着したら、必ず順番待ちの記帳用紙に名前を書きましょう。どれだけ早くから待っていても、この記帳用紙に名前が無ければ、後回しにされてしまいます。 ・記帳用紙は、受付カウンターにあります。 |
予約の有無 | 予約不可 |
補足事項
Q1.
閲覧したい建設業者が複数あります。例えば閲覧したい企業が10企業あったときに、閲覧時間(1時間)が過ぎてしまったら、どうなるのでしょうか?
A1.
自分が閲覧したい業者が複数があり、1度に複数社の閲覧申請をした場合、閲覧時間内に閲覧しきれなかった時は、閲覧できなかった企業含め、いったん全ての閲覧書類を返却しなければなりません。
そして、再度閲覧申請をすることになります。
つまり、閲覧できなかった企業は再度300円を払って閲覧申請をする必要があります。
そのため、1時間という制限時間で、自分が閲覧できるであろう企業数を閲覧申請する必要があります。
ちなみに、1決算当たりの書き写す時間を計測したところ8~10分程度でした。
これは、ただ手書きで数字を自分の持ち込んだB/S、P/Lに書き写した場合です。
ちゃんと、書き写した金額と各項目の金額が一致するか確認しながら行った場合、もう少し時間がかかるかもしれません。
なので、ただ書き写すなら1閲覧時間(1時間)あたり6~7決算程度、金額に相違がないか確認しながら丁寧に行うのであれば5~6決算程度の閲覧になるものと思われます。
Q2.
閲覧中にお手洗いに行きたくなった場合、閲覧書類をいったん返却する必要はありますか?
A2.
返却の必要はありません。
貴重品をもってお手洗いに行けばOKです。
ただし、閲覧時間の延長などはありませんので、ご注意ください。
東京都庁に来庁してから電気工事業者の決算書を閲覧するまで(写真説明あり)
それでは、東京都庁で電気工事業者の決算書を、都庁入庁から写真入りで順を追って説明します。
①都営地下鉄大江戸線の都庁前駅から行くと、まず東京都庁第一本庁舎の建物に入ることになります。↓は地下の入り口です。
②階段・エスカレーターを上りまっすぐ進むと右手に電光掲示板が見えてきます。
③電光掲示板を横目にまっすぐ進むとエスカレーターが見えてくるので2階に上がります。
④エスカレーターで2階に上がったあと、まっすぐ進むと第二本庁舎へ行くための出口が見えます。
⑤第一本庁舎の出口からまっすぐ進むと、第二本庁舎の入り口が見えてきますので、そこから、第二本庁舎へ入ります。
⑥第二本庁舎へ入ると来庁者用の端末が設置されています。この端末に自分の名前などを入力します。
⑦まず、来庁者の名前(自分の名前)を入力します。四角の部分に自分の名前の漢字等を1文字ずつ入力します。
⑧自分の名前の読み仮名をカタカナで入力します。
⑨法人として来庁した場合は会社の形態(前株や後株など)を選択します。個人の場合は、「個人」を選択します。
⑩法人の場合は、法人名を入力します。
⑪電話番号を入力します。法人として来ている場合は、会社の電話番号で問題ありません。
⑫再来庁の予定があるか確認を受けます。午前中に来庁して、お昼ご飯などで退庁したあと、午後から再度来庁する場合は「あり」を選択します。ただ、一般法人や一般の個人の方が電気工事業者の決算資料などを閲覧できるのは、午後からのみなので、基本は再来庁予定「なし」を選択しましょう。
⑬訪問先を選択します。訪問先は、「2庁3階 市街地建築部」を選択します。
⑭同伴者の人数を選択します。同伴者がいなければ「同伴者なし」を選択します。
⑮すべてを入力し終えると最終の確認画面が表示されます。内容に問題が無ければ、画面一番下にある「申請する」をタップします。
⑯QRコードが印字されたレシートが機械から出てくるので、それを持って右手の方にいる受付の警備員さんにレシートを見せます。
⑰警備員さんから一時通行証を渡されるので、それを持って先ほどのQRコード付きのレシートを使って入庁ゲートを通過します。
⑱エレベーターで3階の市街地建築部の建設業課に向かい、電気工事業者の決算書類などの資料の閲覧の受付をします。閲覧者が多い場合は、待ち時間が発生しますので、時間に余裕をもって行きましょう。
⑲職員さんが資料を持ってこられるので確認して、自分が閲覧したい資料で間違いなければ、その旨を伝えて、利用料を別窓口で支払い、閲覧窓口まで戻り資料を受け取ります。受け取った後は、決算書類などを閲覧し、閲覧が終わったら閲覧窓口に資料を返却して退庁します。
以上となります。
最後に
いかがだったでしょうか。
今回は、都内の電気工事業者の決算書を東京都庁で確認する方法について、以下の4つの項目で解説しました。
- 電気工事業者なら、各都道府県庁で決算書が確認できるかも!
- 都道府県庁に決算書を確認しに行く前に準備しておきたいこと・モノ
- 東京都で電気工事業者の決算書を確認する場合の基本的事項
- 東京都庁で電気工事業者の決算書を確認するまで(写真説明あり)
「1.電気工事業者なら、各都道府県庁で決算書が確認できるかも!」では、電気工事業者が建設業許可を取得していれば、各都道府県庁で決算書などが閲覧できるかもしれないことを解説しました。
「2.都道府県庁に決算書を確認しに行く前に準備しておきたいこと・モノ」では、
- 「許可番号」「社名」「代表者の氏名」「所在地」をメモ書き
- 「建設業許可申請書等閲覧請求書」を事前に記入
- 「貸借対照表」と「損益計算書」の書式を用意
- 電卓などを用意
以上4つのこと・モノを準備しておくことをオススメ・解説しました。
「3.東京都で電気工事業者の決算書を確認する場合の基本的事項」では、東京都の場合、都庁のどこの部署で閲覧ができるかといったことを解説しました。
「4.東京都庁に来庁してから電気工事業者の決算書を閲覧するまで(写真説明あり)」では、地下鉄大江戸線で都庁前駅に行ってから、工事業者の決算書を閲覧し、退庁するまでの流れを写真を交えて解説しました。
近年はコロナ禍や急激な円安などの要因もあり、倒産する企業が増えてきていると言われています。
電気工事業関係もそのあおりは受けています。
後で後悔しないように、取引先の電気工事業者の決算内容は、しっかりと確認しておきたいところです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
これからも読者のみなさんのお役に立てるような記事を、精一杯作成させていただきます。
今後とも応援のほど、よろしくお願いします!
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